データ解析及び活用事例

1.データのダウンロード

データのダウンロードには、ホームページ上から対象とする画像を個別に選択しダウンロードする方法とコマンドラインで条件を指定し、まとめてダウンロードする2通りの方法があります。

個別の画像をダウンロードするには、画像検索画面からダウンロード対象のサムネイル画像をクリックし表示される画像を右クリックで保存します。個別の画像のデータが必要な場合は、画像横のダウンロードアイコンをクリックすると、netCDF形式でデータがダウンロードできます。


図1. JAXAの海色センサ「SGLI」 が観測した2021年4月のクロロフィルa濃度日平均画像

条件を指定し、まとめてデータをダウンロードする時のサンプルコードについては、下のリンク先をご参照ください。

<Pythonをお使いの方>

https://github.com/npec/NMEW.demos/blob/master/NMEW_bulk_download_demo.py

<ジュピターノートブックをお使いの方>

https://github.com/npec/NMEW.demos/blob/master/NMEW_bulk_download_demo.ipynb

2.データ解析

ダウンロードしたnedCDF形式のデータは、netCDFの読み込みに対応した環境を準備することで解析することができます。
ここでは、プログラミング言語の一つであるPythonを用いたデータの可視化と時系列データの解析方法について手順を示します。

2.1.データの可視化

その他、netCDF形式のデータを扱うソフトウェアにNASAが開発した水域リモートセンシングのソフトウェアのSeaDAS、統計分析ソフトウェアのR、地理情報システムQGIS、Wimsoft社のWindows Image Manager(WIM)等があります。

2.2.時系列データ解析

準備中

3.活用事例

解析したデータは、目的に応じて様々の形に加工され活用されています。ここでは、NOWPAPの枠組みにおける富栄養化状況の評価における人工衛星リモートセンシングの活用事例について紹介します。富栄養化とは、海・湖沼・河川などの水域が、貧栄養状態から富栄養状態へと移行する現象のことで、これが人為的な要因で進行すると生態系における生物の構成を変化させ、一般的には生物の多様性を減少させる方向に作用します。 極端な場合には、赤潮や青潮などの現象を二次的に引き起こすため、富栄養化は公害や環境問題として広く認識されるようになってきています。そこで、NOWPAP CEARACでは人工衛星リモートセンシングによって得られるクロロフィルa濃度の時系列データを使って、富栄養化を予備的に評価するツール NOWPAP Eutrophication Assessment Tool(NEAT)を開発しています。NEATは、NOWPAPの特殊モニタリング・沿岸環境評価地域活動センター(CEARAC)のプロジェクトとして、寺内ら(2018)によって開発され、NOWPAP海域の富栄養化状況監視に利用されています(図2)。


図2. NEATによるNOWPAP海域の富栄養化状況予備評価

NEATによる富栄養化評価では、人工衛星リモートセンシングによって得られる月平均クロロフィルa濃度から評価対象期間における直近3年間の平均値を求め、これに対して基準値をあてはめ、評価対象海域を高クロロフィルa濃度海域と低クロロフィルa濃度海域に2分します。基準値は、NOWPAPの参加国の研究者間で議論し、Bricker et al. (2003)が示す中程度の下限値である5mg -3を用いています。次に、評価対象期間の月平均データから、各年の年間クロロフィルa最大値を求め、その値の増減傾向を統計的な手法により判定し、増加傾向、減少傾向、増減なしの3つに区分します。最後に、クロロフィルa濃度のレベル(高い、低い)と増減傾向(増加傾向、減少傾向、増減なし)の結果を組み合わせ、対象海域を6つの類型に分類します(図3)。


図3. クロロフィルa濃度を用いた富栄養化状況の6つの類型

CEARACでは、富栄養化評価のための専門家会合を定期的に開催し、NEATのさらなる改良を進めています。また、NEATは国連環境計画の持続開発な開発目標「SDGs」14の「海の豊かさを守ろう」の達成状況をモニタリングするためのツールとしても、国連環境計画からもその活用が期待されています。

https://www.unep.org/news-and-stories/story/neat-satellite-based-technique-keep-eye-growing-eutrophication-threat-oceans

NEATで使用している時系列クロロフィルa濃度データは、環境省の北西太平洋地域海行動計画活動推進業務の下、現場観測データと複数の海色リモートセンシングセンサの比較検証作業の上、NOWPAP地域の特性に応じたチューニングがなされ作成されています。北西太平洋地域海行動計画活動推進業務については、以下の記事をご覧ください。

4.北西太平洋地域海行動計画活動推進業務の紹介

4.1.業務概要

当事業は、公益財団法人環日本海環境協力センター(NPEC)を中心に、 名古屋大学、富山高等専門学校、富山県との共同研究体制を構築し、北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)の推進を目的とし、環境省からの委託事業として平成15年度から実施しています。
NPECでは、環境モニタリング手法としてのリモートセンシングの有用性を明らかにするため、 富山湾をモデル海域として、既存のアルゴリズムの検証や新たなアルゴリズムの検証を行っています。 このため、衛星による観測データの収集及びシートルースデータを得るための調査を実施しています(図4)。 更には、富山湾における植物プランクトンの挙動と水質状況の関連について、 栄養塩濃度に注目し実態の把握を試みています。 これらの調査の結果を踏まえて、NOWPAP関連諸国(中国、韓国、ロシア) に環境モニタリング手法としてのリモートセンシングの有用性を示すことを目指しています。


図4. 富山湾プロジェクト概念図

4.2.調査地点及び観測項目

本事業では、図5に示す観測地点において、表層(0m)及び亜表層(0.5m、2m)の海水を対象に年に4回程度の調査を実施している。


図5. 富山湾における観測地点

これらの調査地点において、懸濁物質(SS)、有色溶存有機物(CDOM)、クロロフィルa濃度(Chl-a)、溶存無機態りん(DIP)、溶存無機態窒素(DIN)、透明度(Transparency)、溶存酸素量、塩分(Salinity)を観測しています。各観測項目のデータ取得期間及び取得データ数について図6に示します。


図6. 富山湾における観測項目とデータ取得期間及び取得データ数

※観測項目の(0.5 + 2)及び440は、それぞれ深さ0.5mと2mの混合サンプル及び波長440nmでの値を示す。

その他のデータ活用の事例として、環日本海海洋環境ウォッチのユーザーへのインタビュー記事を紹介します。

5.インタビュー

「刻々と変化する海の環境を守るために」。

富山高等専門学校 商船学科所属
千葉元教授のインタビュー
長崎県総合水産試験場 漁業部 海洋資源化所属
高木信夫主任研究員のインタビュー
金沢大学所属
中村浩二教授のインタビュー
東京情報大学 環境情報学科所属
原慶太郎教授のインタビュー
東京大学 大気海洋研究所所属
小松輝久准教授のインタビュー
富山県環境科学センター水質課所属
藤島裕典主任研究員のインタビュー
ロシア科学アカデミー極東支部所属
レオニード ミトニック教授のインタビュー
東京情報大学総合情報学部所属
浅沼市男教授のインタビュー
長崎大学水産学部・環東シナ海海洋環境資源研究センター所属(併任)
石坂丞二教授のインタビュー
九州大学 応用力学研究所所属
柳哲雄教授のインタビュー
九州大学 応用力学研究所所属
尹宗煥教授のインタビュー

6.論文

環日本海海洋環境ウォッチが提供するデータを使った論文のリストです。
Terauchi G, Maúre E R, Yu Z, Wu Z, Kachur V, Lee C and Ishizaka J (2018) Assessment of eutrophication using remotely sensed chlorophyll-a in the Northwest Pacific region Proc. SPIE 10778, Remote Sensing of the Open and Coastal Ocean and Inland Waters, 107780H (24 October 2018); https://doi.org/10.1117/12.2324641

寺内 元基, 前田 経雄 (2016) 北西太平洋地域における衛星リモートセンシングによる 富栄養化の評価と藻場マッピングの現状と課題, 沿岸海洋研究, 2016-2017, 54 巻, 1 号, p. 29-42, 公開日 2020/02/12, Online ISSN 2434-4036, Print ISSN 1342-2758, https://doi.org/10.32142/engankaiyo.54.1_29

Terauchi G, Tsujimoto R, Ishizaka J and Nakata H (2014) Influence of river dicharge on seasonal and interannual variability of remotely sensed chlorophyll-a concentration in Toyama Bay, the Sea of Japan La mer 52 (3)

Terauchi G, Tsujimoto R, Ishizaka J and Nakata H (2014) Preliminary assessment of eutrophication by remotely sensed chlorophyll-a in Toyama Bay, the Sea of Japan Journal of Oceanography, 70(2), pp175-184. doi: 10.1007/s10872-014-0222-z寺内ら 2016

寺内 元基, 石坂 丞二 (2007) 衛星データを用いた富山湾における富栄養化のモニタリング, 沿岸海洋研究, 45 巻, 1 号, p. 43-49, https://doi.org/10.32142/engankaiyo.45.1_43 山田 真知子, 大坪 繭子, 多田 邦尚, 中野 義勝, 松原 賢, 飯田 直樹, 遠藤 宜成, 門谷 茂(2016) 亜熱帯から亜寒帯に及ぶ我が国の5海域における珪藻Skeletonema属の種組成, 日本水産学会誌, https://doi.org/10.2331/suisan.16-00040