活用事例 > 藤島裕典主任研究員 インタビュー

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藤島裕典 主任研究員
富山県環境科学センター水質課 所属
<主な研究テーマ>
富山湾の溶存有機物についての研究
Q 富山県環境科学センターでの水質調査について教えてください。
Q 富山県環境科学センター・写真富山県環境科学センターでは、河川、湖沼、海の水質調査を実施しています。
海の調査は沿岸の25定点において毎月1回実施しており、水質の指標として使用され水中の有機物の量を示すCOD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)のほか、窒素、りんの濃度を計測しています。
富山湾では、10年くらい前にCODが高くなった時期があり、その原因として夏季の植物プランクトンの異常増殖が報告されています。そのため、平成9年より、沿岸の25定点の内主要河川部の河口を中心とする沿岸の7地点と湾中央部、外洋の計9定点で植物プランクトンの濃度指標となるクロロフィルa濃度の観測を毎月1回実施しています。

Q 衛星リモートセンシングデータはどのように利用されていますか?
Q 現場の採水により得られたデータは、広い海の中にある1点のデータです。そのため、例えば数十メートル離れた先に植物プランクトンが高濃度で分布していたとしても、それを捉えることはできません。実際に、富山湾の西と東で、観測された水質のデータが大きくことなる場合があります。
一方、衛星リモートセンシングによる観測では、広大な面積の海表面の情報を瞬時に捉えることが可能です。このため、現場データが西と東で大きく異なった場合には、現場調査日に観測された衛星画像(図1)が示すクロロフィルa濃度分布状況と比較しながら、現場で観測されたデータの信頼性を客観的に確認しています。
このように、我々のセンターでは現場採水から得られたデータの信頼性を高めるために、衛星リモートセンシングデータを活用しております。

富山湾のクロロフィルa濃度画像・写真
図1. 2008年7月30日に観測された富山湾のクロロフィルa濃度画像。
湾の東と西でクロロフィルa濃度が大きく異なっている。


Q 衛星リモートセンシング技術への要望や期待があれば教えてください。
Q 藤島研究員・写真海表面の水温とクロロフィルa濃度が一般的なデータとしてありますが、塩分のデータが取得できれば河川水の広がり状況がわかるようになり良いと思います。我々の調査でも、夏季の富山湾の中央部の表層では、非常に低い塩分が観測されることがあります。また、このような時は、測定されたデータが特異な値を示すこともあり、データの信頼性に不安を抱くこともあります。最近では、衛星が観測する有色溶存有機物(CDOM)から塩分の把握が可能になりつつあると聞いています。このようなデータが定常的にアクセス可能になるとより衛星リモートセンシングの活用の場も広がるのではないでしょうか。
(インタビュー日: 2009年3月)