人は宇宙船に乗って初めて丸い地球を見ることができました。地上にいると、地球が丸いことすらすぐには分かりません。このように離れて見ることで初めて分かることがたくさんあります。気象や海面温度などもその一つで、人工衛星を使って広い範囲のデータを集め、地球全体に及ぶ変化を捉えることができます。このように、人工衛星を使って離れた所から(remote)地球の様子を調べる(sensing)ことをリモートセンシングといいます。
リモートセンシングで何がわかるのでしょう?
人工衛星から海の表面を電磁波を使って観測することで、水温、植物プランクトン濃度、海面高度、海上風、海流などの様々な海の情報を得ることができます。
本ホームページでは、リモートセンシングによって得られる水温と植物プランクトン濃度について説明しながら、海洋環境のモニタリングにおけるリモートセンシングデータの活用について紹介します。
海水の温度分布からわかること
電磁波の中の、赤外線、マイクロ波を用いることで、海表面水温がわかります。
こうして得られた海表面水温を色によって表した図をSST(Sea Surface Temperature)と言います。(左図)
海表面水温からは、海の気候の季節変化を捉えることができます。
また、海の温度分布から暖流や寒流の潮の流れを把握することも可能であり、漁場を知るためにも大変役立ちます。
なぜなら、魚にはそれぞれに最適な水温があり、魚たちはその温度の場所に集まることが予測できるからです。したがって、どの辺りにどのような魚が集まっているかを、出漁前(衛星電波を受信できれば出漁中でも)予測することができるのです。
クロロフィルaとは、植物の光合成において、基本的な役割をしているクロロフィル(葉緑素)のひとつで、海の中においては植物プランクトンに含まれ、植物プランクトンの総量とみなすことができます。
また、陸から排出される窒素、りん等を栄養とし繁殖することから海洋汚濁の目安としても使われています。
人工衛星によるリモートセンシングでは、可視光を利用し海表面の色を波長別の可視光エネルギーを測定することで、緑色の強い場合にはクロロフィルaが多いと判断しています。このようにクロロフィルaを測ることで、植物プランクトンの濃度分布を把握することができます。
植物プランクトンは動物プランクトンや小さな魚のえさになります。海では植物プランクトンを食べる小さな魚たちが集まると、またその魚を食べる魚たちが集まります。こうして、魚の豊富な海域-「漁場」が形成されるのです。クロロフィルaの濃度は、植物プランクトンの濃度であり濃度の高い海域は魚の豊富な海域であると言えるわけです。しかし、この漁場は刻々変化する海の状態によって常に変化しています。
一方、この植物プランクトンも大量発生すると、赤潮や青潮の原因になることがあります。
これは、生活廃水や工場廃水など私達が生活するために排出している窒素やりんなどが川から海に流れ込み、 植物プランクトンが繁殖し易い状態(富栄養化)になることが主な原因と考えられています。
赤潮・青潮の発生のメカニズムなど海の環境を知っていくために、日々のクロロフィルaの濃度分布のモニタリングが役立っています。
人工衛星を使うと広い範囲のデータを瞬時に集めることができます。また、天気予報でおなじみの気象衛星ひまわりなどの静止衛星を使うと、いつも同じ地域を観測することができます。
また、北極と南極の上空を通過する軌道の衛星を利用すると、地球全体を観測することができます。
人には見えない光でデータを集める
人工衛星は遠隔操作によってコントロールされる、いわばロボットです。特にリモートセンシングを目的とした人工衛星はカメラロボットです。したがって、それに装備されているカメラの種類によって、人間の目でとらえられる光(可視光)はもちろん、赤外線や紫外線など人間の目には見えない光の領域でも写真を撮ることができます。例えば波長の違う赤外線のデータをいくつか組み合わせることで、地表の温度や、クロロフィルaの分布、植生指標などいろいろなデータを抽出することができます。
またセンサによっては、電波を地球に向けて発射し、はねかえってきた電波を受信することで表面の様子を捉えるレーダーを備えており、雲に覆われていても情報の収集が可能です。もう少し詳しく知りたい方は以下のサイトをお勧めいたします。