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レオニード ミトニック 理学博士 インタビュー
レオニード ミトニック 理学博士Photo レオニード ミトニック 理学博士

<主な研究テーマ>
マイクロ波リモートセンシングの研究 (特に油流出のモニタリングについて)

レオニード・ミトニック氏のこれまでの業績と論文

  • レオニード・ミトニック氏は1938年レニングラード生まれ。 同氏の研究結果は、これまで国内外を問わず多数の会議やシンポジウムにて発表されており、 さらに100を超える関連紙に掲載されています。 また、「ゴダード宇宙飛行センター水関連優秀チームワーク賞」「2003年NASA AQUAグループ業績賞」 「2004年PORSEC 優秀科学賞」などを受賞しています。

Q これまでの経緯や研究テーマについて教えて下さい。
A 1961年、レニングラード電気工学研究所より電子技術において名誉学位を受け、その後1970年、地球物理学の博士号をモスクワ州立水文気象学センターで、
さらに1996年、モスクワのロシア科学アカデミー(RAS)宇宙研究所にて遠隔宇宙空間研究で科学博士を取得しました。
1977年、RAS極東支部V.I.イリチェフ太平洋海洋学研究所で職につき、現在、同研究所で衛星海洋学部の部長を務めております。
1993年から2004年までは、台湾、ドイツ、日本、中国などの大学で客員教授をしておりました。
私の研究分野は、現場実験やコンピュータモデル、受動・能動のマイクロ波の技術を用いての海と大気の現象とプロセスのリモートセンシングです。
マイクロ波放射計を搭載した初の衛星であるKosmos-243の打ち上げ以来、地球のマイクロ波リモートセンシングの研究に携わっており、マイクロ波放射計とレーダが搭載されたKosmos-384、Kosmos-1500、海洋シリーズ衛星DMSP、ERS-1、ERS-2、Envisat、ALOSなど、ロシアや他国の衛星データの分析、また世界中の海で航空機による実験や船舶による調査にも数多く参加してきました。
衛星の計測値を活用し、海洋と大気の動的現象とプロセス、例えば、潮流、渦、内部波、海氷、油の流出、熱帯低気圧、極低気圧 などについて研究してきました。当時、主要調査員を務めながら、同時に数多くの国際的プログラム(ESA, ARDO, INTAS, JAXA)の共同調査員でもありました。
NOWPAPに関する活動では、 CEARACの、「リモートセンシングによる流出油のモニタリングウェブサイト(http://cearac.poi.dvo.ru)」の構築、更新にも携わっており、現在、同僚らと沿岸地帯・海洋、特にNOWPAP地域、及び周辺地域での油流出発見のための衛星モニタリングに関連した活動を行っております。

Q リモートセンシングの分野に取り組まれたのはなぜですか?
A 研究所を卒業後、レニングラードにある電子工学省の科学調査研究所での 電波技術者としての職が初めての仕事でした。 レーダ受信機の開発、特に高音のレーダーシグナル(インパルス内で周波数の直線的変化を 伴うシグナル。このようなシグナルは、現在、衛星の合成開口レーダや高度計に用いられている) の処理に最適なフィルターの開発、またレーダシステムの開発・試験にも携わっておりました。 4年後、モスクワのロシア科学アカデミー電波・電子技術研究所に移り、マイクロ波背景放射、 星間媒質における分子増幅器、脈動星など、天体物理学の研究を開始し、電波天文学技術で 博士号の提出を計画しました。 電波天文学業務を行うため、マイクロ波の大気放射や、 その水蒸気量への依存度、雲水量、宇宙放出の観測における大気干渉への影響減少の周派数などを、 詳細に研究しました。 2年半の間、大きな電波望遠鏡を駆使して私が行ってきた細かな計算や予測や計測で、 しかしながら、当時利用していたマイクロ波放射計はその検出感度と安定性からみて、 バックグラウンド放射を正確に測るには不十分であることが明らかとなりました。 そこで、直下観測マイクロ波放射計を4機搭載した衛星Kosmos-243 が打ち上げられたのです。 私には地球規模の実験データのプロセスと分析を依頼されました。 大気干渉の研究における経験は、衛星の受動マイクロ波データを活用して水蒸気の海洋に 対する変動性を調査し、わずか2年間で博士号論文を提出し、発表するのに非常に役立ちました。 また飛行機、船舶、衛星でのマイクロ波実験に数多く参加してきました。
1983年、Xバンドリアル開口レーダが搭載された衛星Kosmos-1500が打ち上げられて以来、 能動・受動の2つのマイクロ波技術を活用して、海洋と大気の現象について研究しております。 繰り返しますが、エンジニアとしての経験は、海洋のレーダーリモートセンシングの特性を 理解するのに、非常に有益なものでした。

人類初の人工衛星「スプートニック」の模型と同僚とで


Q ウラジオストックでの科学者としての生活についてお話ください。
A ウラジオストック、そして最近開設された「太平洋海洋学研究所」では、 科学的研究を進展させる機会にさらに恵まれ、同時に、以前いたモスクワやレニングラードと比べて 自由時間も多く主体的に活動ができたと思います。 POIは、通常、毎年数回の船での外洋調査を手配し、海洋‐大気システムの調査は、 宇宙からだけではなく、マイクロ波放射計などの器材を装備した船からも行っておりました。 様々な気象状況の下で、太平洋、インド洋、大西洋での調査や、同時に同僚らが行った 水文学的、地質学的、音響及び光学的な観測から、数多くの新事実を知り得るに至ったのです。 これは衛星観測を理解するのにとても重要なことだと思います。

ウラジオストクの海氷の上で


Q 若手研究者にメッセージをお願いします。
A この地球という星の、特にリモートセンシングを活用した海の研究は、 とても興味深いものであり、また同時に複雑なものであると思います。 地域的、地球的な数多く課題の答えを成功裏に引き出し、そして衛星データを正確に解釈するには、 若手研究者は、海洋学、気象学、放射輸送、センサー、逆解法、画像処理など、 様々な、異なる、しかし関連性のある研究に興味・関心をもっていなければならないと思います。 特に強調したいのは、海洋についての研究はコンピュータだけで行うのではなく、 船に乗って現場に出ることが非常に大事であるということです。 現場から決して忘れられない貴重な体験が得られるでしょう。
(インタビュー日: 2009年1月)