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柳哲雄教授 インタビュー
柳哲雄教授Photo 柳哲雄 教授
京都大学理学博士
九州大学 応用力学研究所所属
<主な研究テーマ>
2004.04~2005.03: 東シナ海の低次生産機構
2003.04~2003.12: 瀬戸内海における外洋起源のリン・窒素
2001.04~2003.12: 日本海の物質循環
2001.04~2001.03: 有明海の物質循環の経年変動
Q 海の環境モニタリングの重要性についてどうお考えですか?
Q モニタリングしないと海の環境変化がわかりません。今、海の環境がどのように変わっていっているのかを把握しその変わり方に規則性を見いだすことが将来の変化を予測するという意味で重要なのです。モニタリングは地味な作業ではあるが、正確に長期間行うことが重要と考えます。衛星データは長期的な変化を捉えることができ、今後その利用は必須であると考えています。

Q 柳先生は、沿岸環境を対象とした研究が多いように感じますが、先生が沿岸環境に着目する理由は何ですか?
Q 特に沿岸環境は、人間の生活にとって一番身近な海であり、赤潮が発生したりすることで魚が採れなくなったりするなど、その環境が人間の生活に関わってくるからです。その他、沿岸域は潮流、波等の物理的な特徴、生態系へ大きく影響を及ぼすりん、窒素等に代表される栄養塩が高濃度で分布していることから、学問的にも重点を置いて取り扱うべきだと考えています。

Q 柳先生が取り組まれてきた研究を教えてください。
Q 衛星データを使用した研究としては、東京湾、渤海を対象とした研究も着手しています。NOAA可視画像データ、水温データ、クロロフィル濃度データを主に使用しています。渤海では、水の流れに関して研究しています。その他最近の知見として、関門海峡の潮の流れが平均的に西に向かっていることを、物理モデルを用いて明らかにしました。
また、渤海を対象とした研究に現在、取り組んでおり、NOAAの可視画像データを規格化 (濁水により汚れている黄河の河口ポイントを0、渤海湾の出口を10) とし渤海湾における濁水の分布状況を把握可能なモニタリング手法を開発しました。さらにNOAAの水温データからは、渤海では、水深が深い地域の方が浅い地域より、温度が上がるのが早いことがわかったのです。これは、一般的に知られている沿岸海域での水温の上昇傾向とは異なり、新しい発見であり、おそらく黒潮の影響だと推測しています。衛星データから得られた結果のみでは、その現象を解明することができませんが、今後衛星データが観測した現象を再現する物理モデルを構築する研究を行っているところです。また、クロロフィルのモニタリングに関しても衛星データを使用しています。クロロフィル濃度のモニタリングには、MODISのデータを利用しており、基礎生産に関して、構築した生態系モデルと比較しています。物理モデル、衛星データ、現地観測のこの3つを利用し、生態系の特性を解明することを目指しています。良いモデルを構築するためにも、時間分解能、空間分解能が高い衛星データは必須であると考えています。

Q 現在、衛星データのどのような情報を使っていますか?
Q 海面高度、水温、海色のデータを利用しています。

Q 衛星リモートセンシングに期待することは何ですか?
Q 衛星データから塩分濃度が判ると良いですね。また、海面高度の時間分解能が現在低いので、上げて欲しいと考えています。特に、沿岸環境は、1日で大きく変化することから、時間分解能が高い観測が必要です。データの配信に関しては、最終プロダクトが少しでも早く、リアルタイムで入手できると良いですね。少しでもデータをオープンに出して頂くことが重要と考えており、その結果、ユーザが多層構造になると考えています

Q 具体的には、どのようなユーザがいるでしょうか?
Q 現在では、漁業で使用されています。また、自治体が使用する可能性があると考えています。更に、海面水温や風の予測を行えば、釣り、ヨット、サーフィン等の海洋レクレーションの分野でも利用される可能があるのではないでしょうか?そのためにも、エンドユーザが利用しやすい環境作りが必要ではないでしょうか?また、これからは、漁業分野における資源管理に関しても、衛星データへのニーズがあると考えています。漁船の移動が最低限となるよう、潮の情報を提供することが重要ではないでしょうか?また、乱獲を防ぐ上でも、衛星データが利用できると考えています。

Q 現在、興味を持っている研究は何ですか?
Q 現在、研究室のWebページで、OCTSのクロロフィル濃度の情報を利用して構築したクロロフィルのモデル結果を公開していますが、今後は、衛星データを利用して、クロロフィル濃度の予測を、日々自動更新させたいと考えています。クロロフィル濃度の高い箇所が、春季に、高緯度に移動していきますが、私はこの現象を「海の桜前線」と呼んでいます。

Q 衛星データを使用することになったきっかけと使用しはじめたころの苦労話等があったら教えてください。
Q 最初は、現地観測を主に行ってきましたが、東京湾や伊勢湾を対象とした研究を進める上で、NOAAの水温のデータを入手したのがきっかけでした。当時は、NOAAの水温データも1シーンあたり数万円と高額で、今みたいに無料で利用することができませんでした。最初は、衛星データの情報を信用していませんでしたが、その後、TRMM、TOPEX、ERS等のデータを利用してきた過程において、衛星データの有効性が分かってきました。現地観測は、点の情報でしかありませんが、広域を面的に把握できる衛星データのメリットは大きいです。
(インタビュー日: 2005年4月10日)

学生さん インタビュー
宮本英樹 M2
福岡大学工学部土木工学科卒
九州大学 応用力学研究所
柳研究室所属
Q 研究室に入った動機は何ですか?
Q 学部では、土木工学科に所属しており、水環境に関して学んでいました。クロロフィルに関するモデル等に興味を持ち、より専門的に研究しようと考え研究室を選びました。

Q 現在の研究テーマは何ですか?
Q フィリピンの沿岸を対象に、水循環等の数値シミュレーションを行っています。衛星データは直接利用していませんが、衛星データを使用した研究論文には、興味を持って読んでいます。研究を進める上で衛星データを利用する機会があれば、是非とも使用したいと考えています。現在は、MODISのクロロフィルのデータに興味を持っています。

Q 衛星データに期待することは何ですか?
Q 研究を進める上で、鉛直分布に関する情報が重要となりますので、衛星データから海洋の鉛直分布を推定する情報が得られれば、様々な可能性が出てくると思います。
(インタビュー日: 2005年4月10日)

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